昭和四十五年十一月二十五日、東京市ケ谷から巻き起こった日本民族の魂の嵐は、全国を蔽い尽し、日本の歴 史はこの日を境に、新しい局面にたった。戦後久しき間、日本民族の魂は深い惰眠をむさぼり、民族の精神は枯れ、虚妄の思想が世を掩蔽した。日本の伝統は後退し、文化は破壊の危機に瀕し、古典は打ち捨てられ、歴史は歪曲された。
この凶々しき戦後の精神の虚洞、妥協と欺瞞の政治状況のなかで、反体制勢力は着々と革命を準備し保守党は党是を忘れ利益優先に走った。
「情念は枯れ、芭蕉も西鶴もいない昭和元禄」の恐るべき精神の荒廃と、物質の、うつろな繁栄。こうした浮薄さの延長上に、米国占領基本法でしかない日本国憲法は生きてきた。
日本の歴史、文化、伝統の中心たる天皇の地位を曖昧なものとし、国民 を守る軍隊を否定する憲法の下で、日本の全ての法律が敷衍され、偏向教育は大手を振ってまかり通り、生命尊重のみで魂の欠けた安易な風潮が世に瀰漫した。かくて 日本の歴史は疎んぜられ、伝統は軽視され武士の魂は失なわれた。 この譬えようもなく頽廃した現代に、遂に押え続けてきた日本民族の真の怒りが爆発したのである。
三島事件は、確かに悲しむべき衝撃と動揺であった。偉大なる才能、世界に誇るその古典主義にのっとった三島文学の突然の終焉は、驚天動地ともいうべき深い影響 を残した。しかし、われわれ残された者は、この悲しみに堪え衝撃を克服し、三島氏の提起した問題を真剣に問い返さなければならない。
われわれは三島由紀夫氏の、あの憂国の至情あふるる檄の訴えを現実化させるための運動を行なう。革命から日本の歴史、文化、伝統の中心たる天皇を護りぬき、憲法を日本民族自らの手になる憲法へと改め、建軍の本義に基づき自衛隊を国軍となし、輝かしい日本の民族精神を恢弘する。神州不滅の確信と天壌無窮の皇運を扶翼すべく、たゆまず邁進しなくてはいけないのである。
われわれは、三島由紀夫氏の思想と行動と文学の軌跡を追い、その源流へさかのぼり、その祖国への愛と憂いを継承する。
われわれは脈々と受け継がれてきた祖国の歴史の断絶をつなぎ、祖先が営々として築きあげてきた祖国を本来の姿に戻すために努力する。
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