追悼三十五年祭「憂国忌」の御報告


追悼35年祭「憂国忌」

 憂国忌は三十五周年という記念の節目でもあり、発起人関係の出席者を50音順に並べますと井川一久、井尻千男、井上隆史、入江隆則、植田剛彦、小田村四郎、サイデンステッカー、篠沢秀夫、田中英道、中村彰彦、西村幸祐、西尾幹二、萩野貞樹、花岡信昭、藤井厳喜、福田逸、細江英公、松本徹、松本道弘、村松英子、水島総、南丘喜八郎、八木秀次、山崎行太郎の各氏でした(敬称略)。


勢揃いの発起人
勢揃いの発起人

 当日の記録は櫻チャンネルで収録され、シンポジウムの内容は、05年12月22日発売の『月刊日本』で梗概が掲載されました。


シンポジウム
シンポジウム


(資料)
 憂国忌35周年、当日の鎮魂祭で捧げされた祭主祭文全文です。

祭 文

 三島由紀夫命森田必勝命の御霊前に謹んで祭文を捧げます。
 今を去る三十五年前、お二人が市ヶ谷台上で壮烈な自刃を遂げられたとき、私は名古屋に在勤中でした。
役所へ戻る午後一時、秘書から事件を聞きラヂオをつけましたが、何のことか全く理解できませんでした。部屋に戻って早速テレビを見ると、市ヶ谷本館のバルコニーで獅子吼されるあなた方の勇姿を繰り返し映してゐましたが、既にあなた方は絶命されたあとでした。
 夜の会合を終へ、新幹線に飛び乗り、胸騒ぐままに三島邸に駆けつけたのですが、瑤子夫人が気丈に柩を守ってをられました。
 思へばその九月、伊澤甲子麿さんから「三島さんが是非合ひたいと言はれてゐる」とのことで、上京した折にホテルオークラで伊澤さんと三人で食事を一緒にさせていただいたのが最後になりました。
 この時はあなたは凛とした「楯の会」の制服でお見えになり、日頃の快活なユーモアは少なく、専ら憂国の至情を聞かせて下さいました。今から考へれば、あなたは別れの挨拶をしてくださったのですね。まさか二ヶ月後にあのお元気なお姿に会へなくなるとは夢にも思ひませんでした。
 あれから三十五年、今思ひ返すと当時は「昭和元禄」などと呼ばれてゐましたが、まだまだ希望に満ちた時代でした。確かにあなたが嘆かれたやうに、日本は「国の大本を忘れ、国民精神を失ひ、本をたださずして末に走り、その場しのぎと偽善に陥り、自ら魂の空白状態へ落ち込んで」行きつつはありましたが、敗戦の後遺症を克服しようとする国民、青年も生まれてゐましたし、何よりも政治家には戦前の栄光を忘れぬ同憂の士が少なからず現存してゐました。
 しかしその後、かうした長老達が次第に世を去ると、光輝ある国史の成跡を信ぜぬ忘恩の徒が政権を握り、ついに政府は正論を弾圧する幕府と化し、外は中韓両国の内政干渉に屈服する亡国外交を続け、内は伝統と祖先の偉業を否定する自虐教育を放置して人倫の地に堕ちた社会を現出せしめるに至り、国際社会からは完全に軽蔑無視される卑小な国家となり果てました。畏くも先帝陛下におかせられては、かうした状態をお嘆きの裡に崩御あそばされ、世は平成の大御代となりましたが、事態の改善は遅々として進まず、現在に至ってをります。
 あなたは、このやうな亡国的現象の根源である憲法「われわれの愛する歴史と伝統の国、日本を骨抜きにしてしまった憲法」に対して「体をぶつけて死ぬ奴はゐないのか」と憤激されました。
 近時漸く占領憲法改正の気運が高まって参りましたが、最近発表された自民党の憲法草案では、曲がりなりにも軍の保持は謳はれてゐますが、建軍の本義は明らかにされず、逆に占領軍が強制した国体破壊の戦後民主主義イデオロギーを憲法の基本理念として国民の自主憲法の名の下にそのまま追認しようとしてをります。
 まだまだわが国の伝統に基づく真の憲法を制定する機は熟してゐないと断ずるほかありません。さらに建国以来二千六百年、国家の根幹として何人も手を触れることの許されなかった皇位継承に関する皇祖皇宗の規範を一部の人間の恣意によって変改しようとする恐るべきたくらみが政府レベルにおいて進行中といふ憂ふべき情況が生じてをります。
 この三十五年間、乱れゆく世の様を見るにつけても、もしあなたさへ御在世であれば、と思ふことが何度あったか分かりません。しかし嘆くのみでは何の益にもなりません。あなたと同世代の私たちは既に老境に達してしまひましたが、この会場にご覧頂きますやうに、あなた方の志を慕ふ若い人達が集ってをります。かうした志ある青年達と力を併せて私どもも老躯に鞭打って「日本を日本の真姿に戻す」といふお二人の志を実現するため、渾身の努力を続けますことを御霊前にお誓ひ申し上げます。何卒天駆けり国駆りつつ我等の努めをみそなはしお導き賜らんことを謹んでお祈り申し上げます。

 平成十七年十一月二十五日
小田村 四郎

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